私も覚えてるけど、その日兄嫁たまたま近くに来たからってアポ無しだったもんで、リビングとベランダ使ってガッツリ作ってたんだ。
甥っ子がそれ見てすごく喜んだから、自分の部屋にある飛空艇とか持ってきて見せたのも覚えてる。
その時に私の部屋の中を初めて見て、スイッチが入ってしまったらしい。

そもそも前から思ってる部分はあったらしい。
兄嫁は自分の両親の子育ての仕方が嫌だったから、子育ての参考にしようと兄に子供時代のことを訊いたそうだ。
そしたら自分の家庭とは全く違う話が出る。特に同じ妹の立場である筈の私は全然違う。
友達の制限はされない、言葉遣いの制限もない、部活は運動部だし、高校も大学も共学。
花嫁修業もない、就職先も自分で決めてる。もうなにもかもが違う。
(一応両親のためにも弁明させてもらうと、私は放任されていたわけでなくひと並みの教育と躾けは受けていると思う)
勿論家庭ごとの差があるのは十分分かってはいたけど、
義理とはいえ縁が繋がった家だけに自分との差を感じていてずっともやもやしていたところに、私の趣味が発覚。
世間一般には変わってる趣味に傾倒しても両親の理解もあり、更に自室はその趣味の集大成。
女性らしくあれと育てられた自分とは真逆の部屋に衝撃を受け、同時にすごく羨ましかったそうで。

私の部屋に勝手に入ったのも、私の部屋にいると落ち着くのと、了解を取るのがどうしても嫌だったんだそうだ。
話しぶりから察するに、了解を取ってしまったら、そこは私の部屋だと意識してしまうから嫌だったんじゃないだろうか。
私の部屋だってことは十分わかってたけど、自室みたいな感覚で落ち着きたかったらしい。
あまりに自分の感覚とはかけ離れた部屋だったから、自分のことを考えずにぼーっと過ごすことができる唯一の場所だったと。