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月岡靖憲の幼馴染の記憶によれば、靖憲は柔道が強く、それで東京の高校へ進んだようですが、挫折してすぐに尼崎へ戻ってきたそうです。小学校の頃から小刀を持ち歩いたりしていたものの、徒党を組む姉の美代子と違い、靖憲は一匹狼的な存在だったそうです。この性質の違いは、長じて悪に手を染めるようになってからも違いとなって表れます。

高校を中退した靖憲は、職を転々とし、そののちに生業としたのは、他人を騙したり脅したりしてお金を巻き上げることです。その頃には、尼崎の西隣にある西宮に移り住んでいたようです。推定家賃が30万円の3階建ての豪邸に暮らし、ドイツの高級車・ベンツを乗り回していたそうですが、これらはすべて他人から騙し、脅し取ることで得た金です。

この靖憲が、未だに真相が闇に包まれる事件の容疑者として警察にマークされています。京阪神が舞台となった、あの「グリコ・森永事件」です。

すぐ上でも書いていますように、靖憲は一匹狼的なところがあり、犯行も単独犯であることが多いなどを考えれば、子供に電話で現金受け渡し場所を話させるなど、共犯者がいるであろうこの事件の主犯だったとは考えにくい気が個人的にはしなくもありません。ただ、被害者で、犯人に誘拐された、当時の江崎グリコ社長・江崎勝久さんの自宅があったのが西宮で、当時、靖憲も同市内に住んでいました。

同事件では、西宮市内にあった(今も同じところにあるのかどうか私は知りません)ファミリーマート甲子園口店の商品棚に、青酸ソーダ(シアン化ナトリウム)が入れられたドロップの缶が犯人によって置かれましたが、その際ですか、店内に設置された防犯カメラに犯人の男が写っています。

当時の捜査に加わった兵庫県警の関係者の話が載っていますが、靖憲がビデオに写っていたいわゆる“キツネ目の男”の顔つきに近かったことと、ビデオに写る男と肩のラインがそっくりだったため、捜査関係者もにわかに色めき立ち、署に呼んで事情を訊いたそうです。

靖憲は、2007年1月に、被害総額3億円を超える恐喝容疑の容疑者として大阪地検特捜部に逮捕され、その後刑が確定し、14年の懲役刑で今も服役中だそうです。その逮捕時に毎日新聞大阪版に載った靖憲の写真が、今回参考にさせてもらっています『週刊文春』2011年11月8日号に載っています。

靖憲を真正面のやや上方から撮影した写真ですが、頭はいわゆるパンチパーマというのでしょうか、短いオールバックの髪形です。額は広く、眼鏡をかけています。顔はややふっくらしているでしょうか。

防犯カメラに写っている男は左斜め後方から写されていますが、野球帽からのぞく髪の毛の感じは似ています。また、犯人の男も同じような眼鏡をかけています。

私が考えますに、個人を特定する大きな手がかりのひとつが耳の形であるように思います。もちろん、これは捜査をする専門家も注目しないわけはないと思いますが、写真に写る男と、容疑者として睨んだ靖憲の耳の形を十分比較したでしょうか?

容疑者として疑われた靖憲は、抜け目がないといいますか、警察で事情聴取される様子を隠し持っていた録音機で録音しています。その上で、靖憲は複数の報道記者にそのテープを聴かせるなどしながら、自分が不当に容疑者扱いされたことを話してもいるようです。

そうした報道を見て知ったのかどうか、不当な扱いを受けたと主張する靖憲のいい分を弁護する弁護士がつき、国家賠償を請求する裁判を起こし、警察を徹底的にやっつけることで話を進めたそうです。

実際にはそれを口実に金を脅し取るつもりだったのか、自分を弁護してくれる弁護士に因縁をつけ、お金を要求するようになります。自分の獲物と決めたが最後、徹底的に相手を追い込むやり方は、実姉の角田美代子と共通しています。弁護士の事務所に乗り込み、殴る蹴るの暴行を加え、相手を恐怖に慄かせます。さらには、ズボンを脱ぐようにも命じたそうで、脱がされたあと、弁護士がどんな辱めを受けたのかは、想像するよりほかありません。

ほかにも、自宅前で夜になるとクラクションを鳴らすことを数年にわたって続けたりもしたそうです。自分や家族の身の危険を感じた弁護士は、靖憲に要求されるまま、依頼者から預かった金を長い期間、繰り返し渡すことをしてしまい、横領の罪で弁護士も懲役9年の判決を受けています(「dot.>『尼崎連続怪死』角田被告の弟と『グリコ・森永事件』」)。

離れて暮らした姉の角田美代子と実弟の月岡靖憲は、期せずして、凶暴で厭らしい犯行を重ね、そうして得た金で贅沢三昧の生活をしています。ふたりの体に流れる血がそれをさせた、ということになりましょうか。