1996年7月7日午前10時半頃、大西保雄さん・光子さん夫妻は、長女有紀ちゃん(当時4歳)と次女(当時7ヶ月)を連れて太田市の国道354線沿いにあるパチンコ店「タケノコ掘り」にやってきた。
そして次女を背負った光子さんと保雄さんはそれぞれ一列ちがいのパチンコ台についた。
その間、有紀ちゃんは暇つぶしに店内をうろうろ散策して遊んでいた。両親のいるパチンコ台の方に来たり、景品コーナーで品物を眺めていたりしている。
正午ごろになって、光子さんは店内で弁当を買い、有紀ちゃんと次女を連れて駐車場の車内で昼食をとった。しかし、この時、有紀ちゃんはあまりお腹がすいてなかったのか、少し食べただけで「いらない」と言った。
光子さんは午後からも同じようにパチンコを始めたが、しばらくして有紀ちゃんが「もう一度食べたい」とパチンコ台の方にやってきた。
そこで光子さんは有紀ちゃんを出入り口付近にある長椅子に座らせ、そこで弁当を持たせた。
午後1時40分頃、保雄さんは長椅子に座っている有紀ちゃんを見ている。
しばらくすると、有紀ちゃんは光子さんのところにやってきて、「・・・・のおじちゃんがいるよ」と言った。
この時の声は店内に鳴り響く電子音にかき消されよく聞き取れなかったという。「おじちゃん」という言葉だけ理解できた光子さんは有紀ちゃんに「ちゃんと座っててね。」、「ついてっちゃだめよ」と言った。
午後1時50分頃、光子さんが有紀ちゃんの姿が見えないのに気づく。有紀ちゃんが座っていたはずの長椅子にはジュースと食べかけのおにぎりが残されていた。
「有紀がいない」
光子さんの言葉に保雄さんは表へ飛び出した。駐車場、国道などを捜したが有紀ちゃんの姿は見えず、近くの交番に駆け込んだが、交番のなかに誰もいなかったため、太田署に「子供がさらわれた」と通報した。午後2時10分のことである。