2001年11月12日夕刻、群馬県伊勢崎市消防署に119番通報があった。
「女房が死んでるみたいなんだが、来てくれないか」
 受話器の向こうの声は落ち着きはらっていた。救急隊員が現場である金井家に駆けつけてみると、問題の遺体は仰向けに寝かされ、毛布がかけられている。
 隊員が毛布をはぐと、通報者が「妻」と言ったその遺体は異様なほど痩せこけていた。のちに司法解剖により、彼女は158センチの背丈に対して26キロの体重しかなかったことがわかる。
おまけに死因は餓死であった。彼女は長期にわたって家族に食事を与えられず、じわじわと死んだのである。
 「未必の故意」による殺人容疑で逮捕されたのは、被害者の内縁の夫、金井幸夫(37歳)と、その両親と姉の4人。
彼らは被害者が死ぬであろうことを知りながら、何の手だてを講じることもなく放置したのだった。