中井教授によると、私たちの体内のあらゆるところで、タンパク質は常に合成と分解を繰り返し、バランスを保っているという。その中で、筋肉を構成しているのが「筋タンパク質」だ。

 筋トレ後、タンパク質を摂取すると、その「筋タンパク質」の合成が高まる。タンパク質の消化・吸収により、筋肉の原料となるアミノ酸の血中濃度が上昇するからだという。これが筋肉が増える仕組みである。

 厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2020年)」では、1日のタンパク質の摂取推奨量は成人男性で65グラム(65歳以上は60グラム)、成人女性は50グラムである。

 では、運動をしている人としていない人ではどうか。

 中井教授が示した海外の研究によると、体重1キログラムあたりに必要な一日のタンパク質の量(単位はグラム)は、以下の通り。

・運動をしていない人=0・8
・週4〜5回、30分程度の筋トレ=0・8〜1・1
・激しい筋トレをしている人=1・6〜1・7
・激しい持久性トレーニングをしている人=1・2〜1・4

 つまり、スポーツ選手並みのトレーニングをしている人は、運動をしていない人の1・5〜2倍のタンパク質を取る必要があるということだ。

 中井教授は、「まずは、普段の食事でどれだけのタンパク質がとれているか。そして自分の体重、運動習慣と照らし合わせ、適切な量は何グラムくらいかを調べ過不足を確認してほしい」と話す。

 タンパク質は肉や魚、豆類、乳製品などに多く含まれる。ただそれだけでなく、白米やパン、麺類などの食品にも含まれており、うっかり過剰摂取になってはいないか気を付ける必要がある。中井教授はこう強調する。

「誤解されている方がいるかもしれませんが、プロテインは筋トレの効果を飛躍的に高めてくれる魔法のような食品ではありません。過剰に摂取したタンパク質は肝臓で脂肪に変わります。食事で十分にとれているのに、さらにプロテインを飲むと太ってしまうのです」