日本の昔話には、よくオニババや山姥が出てきます。
たとえば、山にひとりで住む山姥が、ときおり道に迷った小僧さんを夜中に襲う話があります。
私の子供たちが小さかったころ、夜寝る前に、昔話をよく読んであげていましたが、
「ざらんざらん、べろんべろんと小僧さんの尻をなめた」などという表現が、
子供向けの絵本に出てきて、ぎょっとしたのを覚えています。

あれは、社会の中で適切な役割を与えられない独身の更年期女性が、
山に籠もるしかなくなり、オニババとなり、
ときおり「エネルギー」の行き場を求めて、若い男を襲うしかない、
という話だった、と私はとらえています。

この「エネルギー」は、性と生殖に関わるエネルギーでしょう。
女性のからだには、次の世代を準備する仕組みがあります。
ですから、それを抑えつけて使わないようにしていると、
その弊害があちこちに出てくるのではないでしょうか。

三砂ちづる『オニババ化する女たち 女性の身体性を取り戻す』(光文社新書)