「私が就職すると、両親は実家を出て自立をするよう求めてきましたが、私は家事がまったくできないうえ、実家から会社まで電車で1本だったので、実家を出る理由がありませんでした。息子が就職しても実家にいることに、父も母も不満そうでしたが、ゴミ出しや買い物、ペットの世話など、自分ができることはなるべくやり、月に5万円を入れることで、何とか『出て行け』というセリフがでないように努力していました」(Sさん。以下「」内同)

そのような生活はその後十数年続いたが、突如、悲劇が訪れる。還暦を迎えたばかりの父親が通勤中に倒れ、そのまま亡くなってしまったのだ。

残っていたローンは団体信用保険で完済できましたが、父の収入がなくなったことで、一気に家計は厳しくなりました

Sさんが「マンションを買おう」と言うと、母親はお金のことをたいそう心配したが、「心配しないでも、そのぐらいの金はある」と言い、通帳を見せると、母親は感激のあまり泣き崩れたのだとか。Sさんは、

「もし自分が一人暮らしを続けていて、貯金がなかったら、母親の面倒やら何やらはどうなったことか……。結局、親が『自立しろ』と言い続けたのは、“そういうものだから”“世間体があるから”というぐらいの理由なんですよ。意地でも実家を出なくて本当に良かったです」

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