「学校へ行くのは時間のムダ」。なぜ少子化の中で通信制高校の志願者は増え続けているのか? 現場教員が指摘する2つの要因
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少子化の波の中で近年、通信制高校への志願者が増加している。「多様な学び方」を求めた結果といえば聞こえはいいが、現場の教員からは懸念する声も上がる。

20年間で倍増する通信制高校の志願者

今年も受験シーズンが終わりを迎えようとしている。

少子化の波の中で、今、通信制高校への志願者が増加していることを知っているだろうか。特に私立の通信制高校志願者が増え、20年前と比べて入学者数が倍増しているのである。

通信制高校と全日制高校の大きな違いは、学校に通学するかどうかだ。全日制高校では基本的に毎日通学して授業を受けるが、通信制高校では送られてくるデータや書類を使ってレポートを提出したり、テストを受けたりすることになる。
学校によっては週に何度か、あるいは年に何度か登校することが決まっているが、基本的には毎日登校することはない。

生徒にとって高校生活の花は、生徒同士で顔を合わせて友情や愛情を育むことだ。にもかかわらず、なぜその機会に乏しい通信制高校を志望する生徒が増えているのか。ある県の教育委員会はその理由を次のように述べている。

「多様な学び方を求める生徒が増加したため」

だが、現場の教師の声はこれとは異なる。通信制高校の志願者増加の裏側に光を当てたい。

「こうした生徒には2つの傾向があるように思うんです。1つがコロナ禍の影響ですね。コロナ禍によって不登校が増えたのは知られていることですが、それ以上に一般の子供たちの間にも『学校なんて別に行かなくてもいいんだ』という認識が広まりました。

タイパ(タイムパフォーマンス)なんて言葉がありますが、学校へ行くのは時間のムダ。学校は通信制で月に1度だけ行って、余った時間をゲームに費やしていた方がいいと考える子が出てきたのです。少し前には信じられないことでした」

もし本当だとしたら、あまり歓迎すべきことではないかもしれない。

「人付き合い」が苦手な子供の増加

学校は何も卒業資格を取るためだけにあるのではない。生まれも育ちも違う同年代の人たちとかかわり、意見を交わしたり、力を合わせて何かを成し遂げたりすることで、人間として生きていく力を育むための空間でもある。その面が疎かになれば、子供たちの心の成長に支障が出てくる危険がある。さらに教員はつづける。

「2つ目としてあるのが、人付き合いが苦手な子が増えたことです。今の子供たちはどこへいても『アツ(圧力)を感じる』といいます。コロナの影響もあるのですが、それ以前から多様な人たちと自由に触れ合う機会を奪われています。
そのため、人と生身で接することをできるだけ避けようとする傾向が顕著なのです。だから、先生とも生徒とも直接かかわらずに済む通信制へ行こうと考えるのです」

生まれつき他者とかかわることが得意な子供はいない。大多数は最初は苦手でも、人と接していくうちにだんだんと慣れ、集団の中で生きていく力を身につけていくのだ。こうした努力をせず、苦手だというだけで避けてしまえば、ますます人とかかわることが難しくなる。それが本人の生きづらさを生むことも十分にあるだろう。
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