ロシアによるインフラ施設への攻撃で、ウクライナでは暖房の使えない厳しい冬を越えなければならない。
国民の生命が危険にさらされている。
わが国でもかつて、大陸戦線に赴いた兵士たちが衣替えもできないままで戦いを余儀なくされた。
今の日本人にとって、こうした話は遠い国や過去の出来事だった。
しかし、実はこの冬、「寒い!」と訴える自衛官が多数出てきている。
ウクライナに防寒服を提供したため、隊員に配布する分がないのだ。
この装備移転が決まったときは、まさに防寒服を配布しようと名札が付けられたところで、隊員たちが大急ぎで全てを剥がしたという。
ウクライナへの物資は「不用品」として提供したため、補正予算などで手当てされていない。
では、急きょ増産ができるかといえば、それも困難という。
国産繊維業界は安い輸入に押され製造能力が低下し、大量生産できる設備や人員を有していない。
将来的な安定受注が約束されるか分からなければ、大規模投資をすることはできない。
最近、防衛産業の危機や基盤維持の議論が盛んになっている。
最先端の技術をいかに保持するかに目が向けられる一方、こうした民生技術と区別し難い分野は軽視されがちだ。
しかし、制服がなければ、いざというときに自衛官は何を着て国を守るのか。
これまで厳しい予算環境の中で先々を考慮する余裕がなく、弱体化する製造企業になすすべもなかった。
これが世界の経済大国といわれた日本の実態だ。
新年を迎えるにあたり、一時的な予算増という治療にとどまらない、長期的視野による真の基盤強化を望んでやまない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/644992fa9f7f838b07c58ee84d505f49769dbd36