政府が、米国製で目標を精密に攻撃できる巡航ミサイル「トマホーク」の購入を検討していることが分かった。
岸田政権が議論する敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を巡り、敵の射程圏外から攻撃可能な国産ミサイルの運用開始は2026年度となる見通しで、米国製導入による早期の抑止力確保案が浮上した。
複数の政府関係者が28日、明らかにした。専守防衛との整合性が問われる。「矛」は米国、「盾」は日本が担うとしてきた日米の役割分担が変化する可能性もはらむ。
政府は北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返した17年にも巡航ミサイルの将来的な導入を検討。トマホーク導入を想定し、これまで米側と協議を行っている。
現時点で、米側がどう最終判断するかは見通せない。米側は機密保持などの観点から、トマホークの売却先を厳しく限定している。
トマホークは、低空飛行するためレーダーに捕捉されにくい。03年のイラク戦争や17年のシリア攻撃の際にも使われた。
政府は専守防衛の観点から、相手に壊滅的な打撃を与える「攻撃的兵器」の保有は認めないと説明してきた。トマホークを取得するなら、この見解から逸脱するのではないかとの指摘が出るのは確実だ。
12月の国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定に向け、岸田政権は敵基地攻撃能力の保有明記を検討している。
防衛省は陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾の射程を延ばす方針。現行の百数十キロを中国沿岸部や北朝鮮に届く千キロ程度へ延ばす計画だ。
敵基地攻撃能力の保有が決まれば転用される方向だが、運用開始までの抑止力確保が課題となっている。
トマホーク導入が実現した場合、海上自衛隊護衛艦への搭載が有力だ。艦船装備の改修が必要となる。(共同)