きゃりーぱみゅぱみゅの 「大人なLADYになるわよコラム」第35回〜『マネーの虎化してるわよ』〜
https://hanako.tokyo/column/kyarypamyupamyu/322036/

例えば、紅白とか歌番組に出れなくなったり、フェスに出れなくなったり、またはフェスに出れたとしてもステージが小さくなったり…。それまで続いてたものが急になくなるとヘコみます。

でも、そこで「いや、出れてたことが奇跡だったんだ」とか「じゃあ、違うことに全力を出そう!」と思ってがんばると、別のプロジェクトがうまくいったりするもので、私は“断つ”ということは“目線を変える”ことと同じだと捉えています。

恋愛もそうです。ずっと元カレのことを引きずっているときは、いい人がなかなか現れなくて、もう忘れようと思ったタイミングでいい人が現れたりしますよね? 少なくとも私の人生ではそうでした。

だから、もはや当たり前になってしまった環境を続けるより、次に進むほうがいい。今回はそんな”当たり前”を変えることについてのお話です。


どの世界でもそうだと思いますけど、やっぱり一度成功例ができてしまうと、「うちら最高だよ! うちらが一番だよ!」となって、結果的に何年も仕事のやり方やスタイルが変わらないということになりがちです。

ぶっちゃけ、私はけっこうそれが「きゃりーぱみゅぱみゅ」というプロジェクト全体でも起きているのではないかと思っています。

もちろんいつメンで、過去の成功例に従ってやったほうが、みんなスキルもあって慣れてるし、事務所も仕事を振りやすいので安心して進められます。前の私も、そうやって作られた“成立した環境”でないと、パフォーマンスに自信を持つことができませんでした。

でも、アメリカのフェス「コーチェラ」をきっかけに、そこがだんだん変わってきたんです。

ダンサーさんをはじめスタッフに体調不良者が続出したために、完全アウェーの異国のステージに一人で立たざるをえない状況になってしまった私。いつものみんながいない! だけど絶対やらなきゃいけない、一人でも成功させなきゃいけない…! あの時ほど、人生で追い込まれたことはありませんでした。

振り返ってみると、これも当たり前が当たり前じゃなくなる瞬間だったんですけど、結果的にそのピンチをチャンスにすることができて、それが自信につながったように思います。

「今の自分だったら、新しい環境だったり、新しい人たちをチームに入れても引っ張っていけるかも?」

帰国してからは、キラキラした気持ちでそう考えるようになっていきました。前からモヤッと思っていた「うちらさいこー」を変えてみようと思ったんです。


だけど、現実はそんなに簡単じゃなかった…。

「じゃあ、具体的にどう変える?」という話から、いざ、衣装さん変えます、メイクさん変えます、ダンサーさん変えます、美術さん変えます、音響さん変えますみたいなリアルな話になると、「え、なんで?」「私はこれだけがんばってきたのに…」となってしまうんです。

人を変えて環境を変えるということは、どれだけ難しいことなのか。理想だけで事は進められない現実が立ちはだかります。

私もその人の仕事に不満があるわけではないし、むしろスキルに対してリスペクトしていますし、これまでの努力や献身に本当に感謝しています。

それに長い期間一緒にいると、その人にしかできない役割とか仕事が生まれて、その人にしかわからないことだらけになります。こっちが何も言わなくても、把握していなくても、いつも完璧に仕上げてくれます。あうんの呼吸ってやつですね。もうその人抜きでは回りません。

だけどその関係って、見方を変えると“おまかせ”でもあって、よくも悪くもお互い頼り切ってしまっている状態です。ある意味、甘えの関係であるとも思えるんです。

その当たり前がなくなってしまうのは実務的にダメージが大きいですけど、でも一緒に手をつなぎながら「うちらさいこー」してると、そのうちどんどん売れなくなっていくのは確実です。

きゃりーぱみゅぱみゅとして、より皆さんに楽しんでもらうには進化をし続けていかないといけないし、その進化のためにはやっぱり新しい人たちと仕事して、私自身も経験値を上げないといけない。

だから、ここでいったん別れてそれぞれの道へ…。

何もないところに道を切り開いていくみたいな話ですから、時には方向を間違えて、「新しくしたけど逆に最悪になった!」っていうこともあるでしょう。でも、現在の自分だったらそれでも引っ張っていけるんじゃないか? 今はそれにチャレンジしたいと思っています。