もう40年近く前になります、当時、何を考えたのか、私は日本中を旅して周っていました。

もちろん、若かった私はお金などほとんどありません。

あちらこちらでアルバイトをしながら、次の目的地に移動するといった、浮浪雲の様な旅でした。

「若いもんが、そんな物ばかり食っとったらいかん」
そんな道中、フェリーで北海道に向かう途中の事です。

フェリー代で所持金のほとんどを使ってしまい、船内の食事も高かったので、食事と言えば自販機でカップラーメンでした。

そんな私を見かねたのか、見知らぬ初老の男性が

「若いもんが、そんな物ばかり食っとったらいかん」
と、私に名刺を渡し、「食事の時間になったら食堂に来なさい」と言ってその場を立ち去って行きました。

言われるままに食事時に食堂に行くと、その男性が定食を準備して待っていました。そこから、その男性が下船するまでの間、私のすべての食事を、その男性が奢ってくれたのです。

「若気の至りとは言え...」
当時はまだ若かった私は、「気前の良い人もいあるもんだ」くらいにしか思っていなかったのか、まともにお礼も言えずにその男性と別れました。

しかし、船内の食堂はとても高かった。今思えば恥ずかしい限りですが、気前が良いだけでは見ず知らずの私に奢ってくれる訳など無いのです。きっと親心だったのでしょう。

その食事があったからこそ、その後も病気にもならず、無事に旅を続ける事が出来たのだと、その男性と同じような年になった今、やっと考えられるようになりました。若気の至りとは言え、旅先の恥ずかしいエピソードとして、今も思い出します。

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