2020年にマスクの非着用を注意した男性を暴行して大けがをさせた罪に問われ、
傷害の罪で起訴されていた渡辺竜太被告(25)に、懲役3年、執行猶予5年の有罪判決が言い渡されました。

この事件で暴行を受けた、神戸市兵庫区に住む60代の男性Aさんは、自宅のベッドに横たわりながら、ため息まじりにこう話します。

「当時は、マスクを着けていない人を見るとよく注意していた。コロナに敏感になっていて、迷惑をかけている人を見ると許せなかった。
わざわざ注意なんかしたからこんなことになった。まぁ、自業自得や」

起訴状などによると、兵庫県で1回目の緊急事態宣言が明けたばかりの2020年5月、
神戸市兵庫区の駐車場でマスクを着けていない渡辺被告を見たAさんは「マスクせんかい」などと注意をしました。

すると立腹した渡辺被告ともみ合いになり、首を絞め上げられて投げ倒されたAさんは、頸椎損傷の重傷を負ったのです。(渡辺被告は2021年に逮捕)

渡辺被告は、これまでの裁判で正当防衛を主張していました。
格闘技の経験者だった渡辺被告。
判決の中で裁判所は「けんかになれば負けるはずのない被害者に対し、けんかに発展しかねない態度に出た。被告人に対して正当防衛は認められない」と指摘。
被害者の言い方にかんに障るところがあったことは否定できないとしながら、その刑事責任は重いと判断しましたが、
もみ合いの中で倒れた被害者のけがの程度は被告の予想を超えるものだったとして、執行猶予つきの有罪判決を言い渡しました。

体を強く打ちつけたAさんは、事件当時のことをよく覚えていないといいます。
しかし、未知のウイルスを前に、感染拡大を止めたいと注意をしたことの結末は、思いもよらぬ深刻なものでした。

Aさんは事件から2年がたった今でも、手足が自由に動かせません。
もともとはよく活動する方だったといいますが、自力で立ち上がることすら困難になってしまい、絶望感をにじませます。

「事件の前は、ゴルフにもよく行っとったし、散歩も毎日のようにしとった。それができなくなった。もう終わりや」

判決の後、実刑以外では最も重い処分であり、被害者への賠償など民事上の責任を果たすように被告に語りかけた裁判長に対して、渡辺被告は「ありがとうございました」と頭を下げました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e4f5079bae0c25cdd4ce47d930b3fdf1089a238c