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政府は8日、ロシア産の石炭や一部木材の輸入禁止などの追加制裁を発表した。先進7か国(G7)と協調し、ウクライナ侵攻の戦費を支えるロシア産業に打撃を与える。ただ、代替の調達先が確保できなければ、電気料金や住宅価格のさらなる上昇につながる恐れがある。
政府はこれまで、ロシアの金融機関の資産凍結や高級車の輸出規制などを行ってきたが、輸入禁止は見送ってきた。ロシア軍がウクライナで多数の民間人を殺害した疑いが強まり、より踏み込んだ制裁を打ち出した。
代替調達が難しい液化天然ガス(LNG)などを避けつつ、ロシアからの輸入が比較的多いものを制裁対象に加えた。貿易統計によると、2021年のロシアからの輸入のうち、石炭は18%、木材は3%を占める。
石炭は発電用の燃料や、鉄鋼、セメントの生産などで使われており、約1割がロシア産だ。日本の総発電量の3割を石炭火力発電に頼っており、萩生田経済産業相は8日の閣議後記者会見で「停電につながることは避けたい」と述べた。一定の猶予期間を設けながら輸入を禁止していく考えだ。
企業は今後、豪州など他国からの輸入に切り替える必要がある。ただ、国内最大手の太平洋セメントは年間石炭輸入量の6割をロシア産が占めており、「すべてを代替するのは難しい」(担当者)という。
石炭価格は過去最高水準で推移しており、電力大手の関係者は「世界の需給は相当逼迫しており、価格がさらに上昇するリスクがある」と警戒する。石炭は鉄鋼の生産に欠かせないため、鋼材価格が一段と上昇する恐れもある。
木材を扱う住宅業界も不安を抱える。林野庁によると、丸太から加工した「製材」は昨年、ロシア製が輸入品全体の18%を占めた。政府は国産材への代替を促すが、需要増で価格が上がり、住宅価格に跳ね返りかねない。
住宅販売などを手掛けるエツサスアーキテクチャー協会(富山県射水市)は、「半年後をめどに一般的な30坪(約100平方メートル)の木造戸建て住宅で、100万円ほど価格が上昇する」と予測する。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「ロシアへの影響が大きいほど、日米欧も多くのリスクを負うことになる」と指摘する。