住民投票による政治は、多数者による少数者への人権侵害が起こりがちであり、
沖縄の市町村による住民投票からの離脱は、民主主義における人権保護の安全装置
として適切な対応であって、統治権の行使として適正である。

民主主義は権力分散による慎重な審議によって、「適正な補償による少数者の救済」
を図ることが最も重要な点であり、投票は権力分散の方法の一つにすぎない。

国、県、市町村といった行政機関の間による紛争は、権力分散の観点から、まずは、
行政機関の間で、公法の規定に基づく「行政紛争解決の手続き」によるべきであり、
それらの判断に反した行為でもないのに、選挙を経ていない官僚組織である裁判所
に、住民がいきなり国家賠償請求訴訟を起こすことは、統治行為論によって却下され
るべきことである。

行政機関の間の「行政紛争解決の手続き」によらず、住民がいきなり国賠請求訴訟を
起こすことが認められるならば、すでに権限行使が度々覆されている沖縄県知事は、
裁判所の官僚組織による判断によって、基地移転を遅らせたことによる損害賠償に
服さなければならないことになる。