たとえば、もともと糖尿病と高血圧があって、過去に数回の脳梗塞(こうそく)を起こし寝たきりの高齢の患者さんが新型コロナに罹患して、幸いいったんは治癒して退院したものの、その後食事が入らなくなり、徐々に体力を失って最終的に誤嚥(ごえん)性肺炎で亡くなったとしたらどうでしょう。

 どの病気も死亡に何らかの影響を与えていますが、直接死因は誤嚥性肺炎です。新型コロナは死因として死亡診断書には必ずしも記載されません。死亡診断書に記載されなければ、死因統計上は新型コロナによる死亡にはカウントされません。ですが、この患者さんは新型コロナにかかっていなければ、亡くならなかったかもしれないのです。

 このため、「新型コロナによる死亡数」と「新型コロナが流行したために亡くなった人の数」に差ができます。新型コロナが社会に対して与える影響を評価するには、死因統計上の死亡数だけではなく、例年の死亡数から予測される数字と比べてどれぐらい死亡数が増えたのかを示す「超過死亡」も考えなければなりません。国によっては検査が不十分で、新型コロナと診断されないまま亡くなった人たちもいますが、超過死亡は全死亡数がわかれば算出できるのが強みです。