オミクロン株の変異プロセスを数理モデルで評価

 新型コロナウイルスのオミクロン株には、ヒトの細胞に結合するスパイクタンパク質と呼ばれる部位に、原株に対して30以上の変異があります。他の変異株の変異は10前後以下であるのに比べて、オミクロン株だけに多くの変異が発生した原因が議論されています。
 本研究では、オミクロン株のスパイクタンパク質に含まれる同義変異(アミノ酸を変化させない変異)と非同義変異(アミノ酸を変化させる変異)の比率に着目し、変異の平衡を仮定した数理モデルを用いて、オミクロン株に見られる29の非同義変異が生じる間に同義変異が1つ以下しか生じない確率を計算しました。その結果、オミクロン株のスパイクタンパク質に見られる変異の偏りが自然に生じる確率は0.2%となりました。これは、オミクロン株のスパイクタンパク質の変異が、人工的な遺伝子組換えなどの、自然界にない何らかのプロセスを経ている可能性を強く示唆しています。