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●なぜ、デモに向かうのか?

●「新しい世界観」の下で生きる
ここからはもはや真偽は大した問題になりません。善と悪あるいは光と闇といった明快な対立軸が作られることによって、人生を覆っていた濃霧が晴れ、疑いの目を向けるべき対象が露わになるからです。

分かりやすい巨悪が設定されることで対処法も明確になります。

陰謀論に根差した反ワクチン運動は、秘密結社に立ち向かう勇者になるための通過儀礼であり、即席で反グローバリズムの戦士になれる臨場感を作り出すのです。このようなスケールの大きな物語をまとうと、デモはただのデモではなく、世界的な闘争への参加、まるで聖戦のような輝きを帯び始めます。

きな臭い世界観によって、日常的で退屈な空間から離脱し、サイバースペースを媒介してディープステートという巨悪との戦いという非日常的な空間へと飛翔するのです。
もはやそれが実在するかどうかなど些細な問題です。自分を鼓舞できるかどうかが最も重要な要件になるからです。

政治運動や既存宗教が魅力を失う一方の現代において、世界の不条理のカラクリとその根源を説明し、不満のはけ口を提供する新しい解決策の一つとして、秘密結社との闘争へと誘う反ワクチン陰謀論はその勢いを増しています。
それは、あたかも現実空間に刺激的な情報を表示し、つまらなくなった現実世界にスリラーという妙味を添えるAR(拡張現実/Augmented Reality)のようです。