「ワクチン接種後の血栓と捉えるべき」

問題はここからだ。この推測が事実だったとして、血栓の形成が“ワクチンに由来する”とまで言い切れるのか。
鈴木氏は「その因果関係や科学的なメカニズムを完全に証明することは難しい」と率直に述べながらも、
「重要なのは血栓が形成された時期です。肺動脈を塞いだのが、以前から体内に存在していた血栓ではなく、
亡くなる直前に生じたものであれば、ワクチンが影響した可能性は高い」

ここで鈴木氏が着目したのは、亡くなる直前の男性の状況だった。
ワクチン接種後に息切れや体調不良を訴え始めたのであれば、
「その頃から血栓が剥がれ始め、肺への栓塞が始まったと考えるのが妥当」(鈴木氏)。
また、死亡当日に、男性が自転車に乗ってクリニックへと向かったことを考慮すると、

「自転車を漕ぐという筋肉の動きをきっかけにして、
左脚の深部静脈から大量の血栓が剥がれた可能性が考えられる。
こうした推測が成り立つと、血栓が最近になって形成されたものであることを示す材料にもなります。
というのも、古い血栓は血管の内壁に癒着して簡単には剥がれないからです。
実際、右脚に残されていたのは、
形成から時間が経って固着したものではなく、いまにも剥がれそうなほど新鮮な血栓でした」

さらに、鈴木氏は試薬を用いた分析も行っている。
「ベルリン・ブルー染色法と呼ばれる手法で、血栓の形成時期の新旧を調べました。
古い血栓組織は試薬と反応させると青色に染まります。
ただ、今回のご遺体の肺動脈に詰まった血栓組織は青く変色しませんでした。
ワクチン接種後に新しく形成された血栓と捉えるべきだと思います」(続く)