中国史といえば役人の汚職が有名である。ではなぜ中国の役人は汚職をするの
か『儒教が原因だ』とか『中国民族に公徳心がないからだ』とか言われていた

だがわたしは19世紀に皇帝の家庭教師をつとめたイギリス人レオナルド・F
・ジョンストンは誰も指摘しなかった原因を挙げた。わたしはその指摘を読ん

で『あっ』と思った。それは『算数』だった。どういうことかと言うと中国の
役人は科挙によって選ばれる。そして科挙の試験は古典一点張りである。その

ため科挙に受かるような者は幼少より一日中古典の勉強ばかりしてる。よって
『算数』の能力がない。掛け算や割り算はできないし足し算や引き算でも簡単

なものしかできない。それが必要だとも思わない。それで役人になる。しかし
役人の仕事は『算数』の連続だ。洪水が起きた時何万個の土嚢が必要か?その

土嚢はひとつ作るのにどれだけの時間と人手がいるのか?その土嚢を積むのに
かかる人手と費用は?よって洪水の修復に掛かる費用と時間は?その他戦争,

内乱鎮圧,宮殿建設,万里の長城の修復など算数の連続だ。ではそれが出来な
い役人たちはどうしたのか?ポケットマネーで秘書を雇い仕事をさせたのだ。

これらの役人は実際に仕事をしている秘書の不正を見抜くことが出来ない。秘
書がいくら正確な報告書を提出してもその数値を計算できなければ意味がない

。そして上司の高級官僚も部下の下級役人の不正を見抜くことが出来ない。よ
ほど大掛かりな不正でない限り一割二割程度のピンハネは『おかしいんじゃな

いか?』とも思わない。かくして中国の役人にとって『少々の余禄は当たり前
』となった。