きには、必ずと言っていいほど野村さんと一緒になった。「最初は
「ホテルの社員に野村さん(仮名)という40代の女性がいたんです。仕事を丁寧に教えてくれるいい人のイメージだったのですが、徐々に距離感が近くなってきて……」 佐藤さんの仕事は主にフロントでの受付業務やパソコンを使った予約入力だ。夜勤の場合、アルバイト一人と社員一人の組み合わせになるのだが、不思議なことに佐藤さんが入るときには、必ずと言っていいほど野村さんと一緒になった。「最初はあまり気にしていません>>24
んでした。社員の数も少なかったので、そういうものだろうと。でも、のちに僕と一緒になるように野村さんが仕組んだとを知って、ぞっとしましたね」 野村さんは佐藤さんの教育担当になるよう自ら名乗り出て、佐藤さんが夜勤になるときは自分も夜勤になるよう暗躍していたという。そして、深夜に二人きりになると、お待ちかねといったばかりに、野村さんのセクハラはヒートアップしていく。「まず僕がフロントで接客をしていると、>>35
隣にぴったり寄り添うんです。こうした方がいいよ、というアドバイスをくれるんですが、そのたびに体に触れてきて。お尻や背中を指で撫でてくるんですが、相手は社員だし女性だし、あんまり強く言えないんですよ……」 40代でも相手は女性。セクハラと騒ぎ立てることもできず、遠慮して黙って流してしまうことを選んだ。誰かに相談しなかったのか? と聞くと、静かに首を横に振る。「言えないですよ。なんか、恥ずかしいじゃな>>21
いですか」 女性から男性への性加害は言い出しにくかったという。黙認し、現状維持する道を選ばざるをえなかったのかもしれない。しかし、その後も野村さんのセクハラは収まることはなかった。出社すると、「今日も一緒だね。よろしくね」と挨拶をされるが、この一言を聞くだけで気分が悪くなりだす。何度も辞めることを考えたが、当時にしては時給もよく、他の仕事のあてもなかった佐藤さんは、野村さんからのセクハラの嵐に耐え>>30
て働くしかなかった。230 「パソコン作業をしていると、野村さんが後ろから近づいてくるんです。体越しにパソコンの画面を眺めて、わざとらしく僕の背中に胸を押し当ててきて……。それが本当に気持ち悪くて」 それだけではない。「結構ハードな質問もされて。 『一人でシテ>>13
く言えないんですよ……」 40