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▼プロ転向3年目 探求心はより大きく

江尻
 プロに転向したことで、自分に対する見方が変わったりだとか、こんな伸びしろがあったんだということに、たくさん気付いたのでは?
羽生
 僕がフィギュアスケートをやっていくに当たって、バレエとかダンスをほぼ独学でやってきている。フィギュアスケートの選手ってバレエを習う人もいるんですけど、僕は習ってなくて、振り付けの先生に言われたままでやってきた。それが「基礎ってこんなに大事じゃん」ということに今更ながら気付きはじめ、ダンスだったり表現だったりを基礎から学んだらまた違くなるよねという伸びしろを感じつつ、トレーニング方法や筋力面、アスリートの部分においては、フィギュアスケートって、日本では知っている方はたくさんいらっしゃいますけど、競技人口的にもマイナーなんですよね。間違いなく。
 それこそ野球だったら、ストレートの回転数が何回転だとか、軸がどれくらいの角度でどうなっているとか、オーバースローだったら、どれくらいの腕の角度で、どれくらいしならせればいいのかとか、そういうデータが出せるじゃないですか。フィギュアスケートは出せないんですよね。競技特性上、どうしても30メーターと60メーターという広いリンクを、あまりにも縦横無尽に動いてしまうので、データ取るの本当に難しいんですよね。
 ただ、データはちゃんと取れないかもしれないけども、トレーニング方法として、いわゆる昭和の時代だったりとか、平成初期とか、そこから何も変わっていないことが多いのが、フィギュアスケートの現状だったんです。科学的に証明されていないマイナースポーツだからこそ、より一層、僕が率先して、開発していけば、もっともっとトレーニング方法いろいろあるし、もっともっとうまくなる方法がたくさんあるんだなっていうのに気付けたこの3年間でしたね。
江尻
 うわぁ…伺いたいと思ってたところよりも、めちゃくちゃ深いところからきて…。

▼最新単独公演「Echoes of Life」について

羽生
 大学の時に、生命倫理っていう授業を履修して、そこからその哲学って面白いねって思い始めて。僕が生きていく中で、震災のこともありましたし、日々、世界情勢も変わっていく中で、今の世の中に僕が発信したいことって、命に対する考え方の哲学であったりとか、向き合い方みたいなことをテーマに、表現していきたいなって思ったのがキッカケでした。
江尻
 もうひとりの羽生さんなのかな?羽生さんぽい人と、語りかけ合う、問いかけ合う。生きるとは、それをまた返してくれない。で、また考えさせるっていうところで、僕はずっとこう引っ張り込まれてですね。
羽生
そこは渡してはいけないところだなと。あの物語の主人公は、こういう風に思っているんだよっていうのを渡してあげちゃうと、そこに縛られてしまうんだろうなというのがあったので、そこは哲学の基盤に立ち返って、全部は渡さないように。で、考えて考えて、その考える時間を、フィギュアスケートの音楽であったり、僕の演技であったり、そういったところから、自分の経験とか過去とかを想起させながら、考える時間を作ってあげてっていうエンターテインメントにしましたね。