>>369
確かに、坂柳の言う通りかもしれない。
今の攻防でもそれはよくわかった。
「さて、そろそろこちらからも行かせてもらいますね」
次の瞬間、視界から消えるように動いたかと思うと、いつの間にか目の前まで迫ってきていた。
「くっ……!」
咄嵯に身を捻って回避するが、僅かに頬を掠める。
そのままの勢いで後方へ飛び退き間合いを取る。
「ほぅ……反応は良いようですね。ですがまだ私には及びません」
余裕の笑みを浮かべている。
こっちの攻撃が当たらない。
それどころか、向こうの攻撃を捌き切ることすら出来ない。
「まだ、終わりじゃないぞ」
素早く腰を落とし、両手で拳銃を構える。そして、連続して引き金を絞る。
しかし、坂柳はその全てを最小限の動きだけで避けていく。
「無駄ですよ。そんな攻撃では私には当たりません」
確かに、お前ならそうだろう。だが、狙いはそこじゃない。
「はっ……!!」
銃撃と同時に、身体を屈め一気に距離を詰める。
そして、懐に飛び込むと腹部に向けて蹴りを放った。
「うっ……!」
確かな感触。坂柳が初めて表情を変える。
「なっ……!」
「油断したな」
「……まさか、ここまでとは」
坂柳が距離を取りながら呟く。その額からは一筋の汗が流れ落ちていた。