――アイデアを生み出すのには能力が必要なのか。

「そもそもアイデアを生むのに特別な能力はいらないと思う。面白いことを見つけたいという一点に集中できる好奇心があればいい。
ヒット商品が生まれるのはまれだが、とにかくアイデア(情報)を思い浮かべること。アイデアは質よりも量だ」

――「質より量」というが選別が負担になるのでは。

「不要な情報ばかりではアイデア創出に時間がかかってしまう。メモを残す過程で一定のレベル分けはすべきだ。
新製品開発ならば『面白い』『欲しい』『絶対に買う』にざっくり分け『絶対に買う』だけ残すといった具合だ。
きっかけは自分の興味で構わないが、ビジネスのゴールは商売になるかだ。その軸を変えてはいけない」

「すぐ成果につながらなかった発想が将来に生きることもあるし、過去に除いた情報が好材料になることもある。
パソコンを使えば管理も楽だが、紙のメモも項目別に整理し、保存しておきたい。流行は時代ごとに変わるが、アイデア自体が腐ることはない」

――アイデアを会議で発表するのに抵抗がある。

「アイデアが成立する条件は3つ。『熱意』『確信』『発言力』だ。今まで自分が面白い、使いたいと思った商品は、少なくとも自分一人の欲求から生まれた。
自らが興味を持ち、気持ちをつぎ込んだ商品なら誰よりも詳しく、正しい説明ができるはず。
そのためにもアイデアが成立するまでのプロセスが記録されているメモの存在は重要だ」

(佐々木聖)