SARSの致死率は感染者の年齢、基礎疾患、感染経路、曝露したウイルスの量、国によって大きく異なる。全体としてはおよそ9.6%(2003年9月)
と推計されているが、24歳未満では1%未満、25〜44歳で6%、45〜64歳で15%、65歳以上で50%以上となっている。
男性であること、基礎疾患 の存在も高致死率のリスク因子とされている10)。SARSの可能性があると判断された人のうち、
10〜20%が呼吸不全などで重症化しているが、80〜90%の人は発症後6〜7日で軽快している。1カ月以上人工呼吸治療を続けても死亡する例がある。

無熱の発症や、細菌性の敗血症または肺炎の併発のような非定型的な発症の仕方が、高齢者における問題点として特に取り上げられている。
一般にこの年齢層 は、免疫力の低下や基 礎疾患を伴っていることが多く、他の年齢層より頻繁に医療施設を利用するなど、
院内感染伝播の事例の発生につながっている。また、小児におけるSARSの 報告頻度は低く、12歳未満では咳嗽、鼻汁のみなど、
より軽症なことが多い。妊娠中のSARS感染は、妊娠初期では流産の、妊娠後期では母体の死亡の増加 につながる例のあることが報告されている。