※11/8(火) 8:17配信
現代ビジネス

 平均年収443万円――これでは普通に生活できない国になってしまった。

 平均年収の生活、いったい何ができて、何ができないのか? 
 20年ほど労働や雇用の問題を取材し続けてきたジャーナリスト・小林美希さんの注目の新刊『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』では、「平均年収では思うような暮らしができない国」の実情を追っている。

 年収443万円──。

 これは、1年を通じて働いたこの国の給与所得者の平均年収の金額だ。

 国税庁が毎年発表する「民間給与実態統計調査」では、2021年の給与所得者の平均年収が443万円で、平均年齢は46.9歳だった。この年齢は、ちょうど就職氷河期世代と重なる。正社員と正社員以外それぞれの平均年収を見ると、正社員は508万円、正社員以外は198万円だった。

 就職氷河期世代を中心に広がった非正規雇用で働く側からすれば、平均年収443万円は、夢のまた夢だ。「中間層」が崩壊するなか、正社員以外からの「年収が400万円もあったら、安心して暮らしていける」との声は多い。しかし、現実はちょっと違うようだ。

 平均年収443万円というのは、あくまで平均値。中央値は思いのほか低い。年収の分布を見ると、最も多いのが「300万円超400万円以下」で、全体の17.4%を占めている。3番目に多いのが「200万円超300万円以下」の14.8%で、3人に1人が200万~400万円の間の収入となる。ここ何年も、その傾向は変わっていない。

 それに加え、働き盛りの男性の収入は減っている。

 国税庁の調査から、金融不安が起こった1997年と直近データである2021年の40代男性の年収を比べてみたい。40~44歳では645万円から584万円となって年間61万円減、45~49歳も695万円から630万円になって年間65万円減っている。
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