昭和61年(1986年)6月20日付読売新聞朝刊
 グリコ社長誘拐 犯行車、6台に絞る 近所の女性目撃者 ナンバーを記憶 再聴取で判明
「グリコ・森永事件の発端となった一昨年3月18日の夜の江崎勝久・江崎グリコ社長(44)誘拐で、犯人の三人組は赤色
2ドアの乗用車を犯行に使ったが、事件直前に近所の女性が車のナンバーを目撃していたことが、兵庫、大阪両府県警捜
査本部の19日までの再捜査でわかった。大阪ナンバーで、数字の4けたを覚えていたが、事件後この女性宅に男の声で脅
迫電話がかかり、口を閉ざしていた。捜査本部は、この電話は犯人グループからのものとみており、この証言は捜査を
急展開させる決め手として重視、ナンバーなどから乗用車を6台に絞り込み、割り出しに全力を挙げている。」

 脅迫され、口閉ざしてた
「目撃したのは、事件当時江崎社長宅近くに住んでいたA子さん(24)。
 事件約30分前の午後9時ごろ、同社長宅前の道路を帰る途中、赤色2ドアの乗用車が西向きに止まっていた。帰宅して
入浴中、車が止まっていたあたりで人が争うような声がしたので、入浴後道路に出てみると、車はなくなっていたという。
 捜査本部は、車の特徴が、ら致された江崎社長の証言と一致することや時間帯などから、目撃の車が犯行車とみてA子
さんから事情聴取。テールランプの形などから、車種はニッサンスカイライン、三菱ギャラン・ラムダのいずれかとわ
かった。
 しかし、A子さんが赤い車の目撃者として報道されると、直後にA子さん宅に男の声で「警察にいらんことしゃべると
ためにならんぞ。どうなるかわかっとるやろな」という脅迫電話がかかってきた。犯人はA子さんの自宅を知って、電話
番号を調べたとみられる。
 このため、A子さんは脅迫電話については黙っていたが、捜査本部が「A子さんは車のナンバーを目撃していたが、おび
えて口を閉ざしている」という聞き込みを得て、再捜査。
 A子さんが最近になって転居したことから、あらためて事情聴取したところ、車は大阪ナンバー。平仮名文字はわから
ないが、数字の4けたを目撃していたことがわかった。
 追跡捜査の結果、該当ナンバーや4けたの数字が似ている約90台の車の中には、事件当時、盗難被害にあっていたもの
はない。すでに転売されたり、廃棄処分になったり、色が塗り替えられた車もあるが、6台を除いてはいずれも不審点は
なかった。同本部は、この6台の周辺に不審者がいるものとみて追跡捜査を急いでいる。」

自動車関連の捜査がことごとく行き詰まったのをみると、犯人は偽造ナンバープレートを使用していたとしか思えない。