>>659
「闇に消えた怪人」には抜けている点もある。テープの送り先は伏せられているが、
藤沢和巳氏である。以下は「53年テープ」を公表した（おそらく）最初のもの。

昭和59年（1984年）11月9日付読売新聞夕刊
　6年前、酷似の脅迫状　1億要求テープ　グリコ役員宅へ 初老の男「毒入れる」

　【大阪】グリコ・森永脅迫事件を捜査中の大阪、兵庫など警察当局は、さる53年、
江崎グリコ役員宅に一億数千万円を要求する脅迫状が届いていた事件を洗い直して
いるが、同脅迫状には今回と同じように録音テープが同封され、「現金は白のライ
トバンに積み、役員が大阪空港近くまで運んで待て」と指示していたことが、9日
わかった。テープの声は初老の男。「若いもん三人がいる」とも言っており、脅迫
の手口、現金の受け渡し方法、犯人グループの構成が今回と酷似しているため、両
事件は何らかの関連があるのではないかとみて、初老の男の割り出しを急いでいる。
　捜査関係者によると、古い脅迫テープは53年3月ごろ、大阪府豊中市に住む当時の
江崎グリコ重役の自宅に送りつけられた。テープの声は50歳―65歳の男性。一部に
関西弁がまじるしわがれ声で、4、50分にわたって脅迫。グリコ本社に対し一億数
千万円を出すよう要求していた。
　「金がいる。過激派が三億円要求している。若いもんは三人いて、三億円いると
言っているが、私が一億数千万円に抑えた」とし、要求に応じない場合、若い者が
「製品に毒を入れる」「火をつける」と仕返し行動を列挙、現金受け渡し方法につ
いては、別の同社役員名を挙げて「現金は白のライトバンに積み、役員が運べ」と
命令、大阪空港付近を連絡、待機場所として指定した。
　グリコ・森永脅迫事件の捜査当局は、犯行が今回のようにしつようでない点など
から、一応「両事件の犯人は別」とみているが、グリコ・森永犯も①最初の脅迫状
で「白かアイボリーのライトバン」に身代金を積むよう指示②二回目以降、脅迫テ
ープを同封③脅迫状の送り先に役員宅を選択④江崎社長誘拐など実行グループは三
人――など、ぴったりする点も多い。
　このため当局は、古い脅迫事件の関係者の中に、今回の犯人グループとつながる
人物がいる可能性を否定できないとして、テープの一部をコピーして捜査員に持た
せ、“声の主” とその周辺人物に関する情報収集を続けている。