一柳展也を刑務所で見た見沢知廉という作家が「囚人狂時代」という本
に彼のことを書いている。
千葉刑務所では、囚人は月曜から金曜までの5日間、工場に出て働くことに
なっている。
そのうち三日間は1日に40分の休憩時間があって運動ができる。
工場の片隅にはダンボール箱が置いてあり、ソフトボール用の大きなボール
や金属バット、グローブが投げ込まれている。
その休憩時間のこと。
一柳は野球が好きなので、ニッコリ笑って金属バットを振り回し始めたという。
八割が殺人犯という凶悪犯ばかりの猛者たちも、彼の素振りには皆、距離
を取った。
「先生!大変ですっ。一柳が金属バットを振り回しています!大丈夫なんで
すか?」
工場を統括する担当も困った。囚人には原則として運動を奨励している。
いくら一柳とはいえ、金属バットを禁氏するわけにはいかない。
「まあ・・・・・ははは、いいんじゃないの・・・・・・・」
かくして一柳、”野球公認”となったという。
 
というような、なんともユーモラスでそして時には壮絶な刑務所体験が「囚人狂
時代」には書かれている。