小形エグゼクティブプロデューサー

「ガンダムシリーズファンの男性、女性の比率は9:1くらいなのですが、『水星の魔女』は7:3くらいで、新規ファン層も半分くらいは若者でした。昨年夏に開催したイベント(『機動戦士ガンダム 水星の魔女』フェス 〜アスティカシア全校集会〜)でも、家族やカップルで来場されている方もいて、これまでガンダムシリーズを見てこなかった方にもアプローチできたと実感しています。アニメに対する捉え方がこの5年くらいでガラッと変わっていることも大きいと思います。『SEED』を放送していた20年前とは違う状況で、業界全体がいい方向に向かっていて、良い時期に放送できました」

「(水星の魔女のヒットについて)若い人がしっかり見てくれたという意味で『SEED』に近い。『SEED』以来の大きな波になりました」

「『水星の魔女』が、シリーズをこれまで見てこなかった若い方にアプローチしようとしているのに対して、『サンダーボルト』などは、そういった方々にも見てほしいのですが、基本的には既存の宇宙世紀作品のファンに向けて制作した作品です。ガンダムシリーズの映像戦略としては、テレビシリーズは新しいファン、映画やOVAは既存のファンに向けて制作していて、両軸で動いています。そもそもベクトルが違うものなのですが、日5で放送できたことは大きかったです。ガンダムシリーズはさまざまなバリエーションがあることを知っていただける機会になりました」

「テレビシリーズの新作は基本的に挑戦的であっていいと思っています。富野監督が作ってきた作品の系譜を見ても、ファースト(機動戦士ガンダム)と『機動戦士Zガンダム』、『Z』と『機動戦士ガンダムZZ』で、ある種の前作の否定から入っている。前作のことを一回忘れて、新しい作品をつくるぐらいの挑戦をしてきました。だから、ガンダムの新作テレビシリーズは置きにいかない。ファンがいる作品を深掘りする方向性ではなく、新しく挑戦し続けようと考えています」

「基本的に映像はシナリオ、演出ありきで、そこが面白くなければ、どんなに作画がよくてもダメだという考えはあるのですが、昨今は作画のクオリティーを求められます。昔のテレビシリーズは、話数によって波があるのが当たり前でしたが、今は平均的にレベルが高いものが求められ、中途半端なことができなくなっています。以前は、テレビシリーズといえば、各話で個性を出せて、実験や挑戦もできて、クリエーターや制作が成長することができました。実験したことを映画やOVAで開花させることもあったのですが、それが難しくなっている状況ではあります」
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