■ 藤井二冠のすごさをAIが“可視化”した

去年1月、本格的に運用が始まった「SHOGI AI」は、対局中継の画面上部に、その時点でのそれぞれの棋士が勝つ確率を「勝率ウインドウ」で表示する。
AIの形勢判断を〇%対〇%というパーセンテージで示したアイデアが画期的で、他の将棋中継も追随し、いまや形勢表示の標準形となっている。

さらに画面右側には次に指す手の「候補手」が、“Best(最善手)”“2(番目)”など推奨順に最大5手まで表示される。
候補手の右側には、最善手を指さなかった場合に「勝率」がどれだけ下がるかという数値も示されている。

この「SHOGI AI」が劇的な効果を発揮したのが、藤井聡太二冠初のタイトル戦となった去年6月の棋聖戦第1局だった。

最終盤、「勝率」80%以上という優位を築いた藤井二冠。
だが相手の渡辺明名人(当時は棋聖位含む三冠)も反撃し、藤井二冠の王将に16手連続という怒涛の王手ラッシュをかける。

この連続王手の間、「SHOGI AI」は観戦者が痺れるような選択肢を示し続ける。
最善手を指せば藤井二冠の勝ち、2番手以下の手だと「勝率」が逆転し渡辺名人の勝ちだという、正に「天国か地獄か」の状況を数値で表現したのだ。

結局、藤井二冠はAIの示す最善手を指し続け、渡辺名人の攻めをかわし切った。
藤井二冠の強さを示した戦いだったのと同時に、将棋観戦にAIが無くてはならないことを知らしめた1局だった。

「AIがないと多分、普通に王手を回避して勝ちました、くらいにしかなってないと思うんですよね。
何が起きたか、これまで素人にはわからなかったことが、AIができたことによって可視化されて誰もがすごいことを認識できるようになった。それが新たな将棋ブームにもつながったと思います」(ABEMA藤崎氏)

一方で、豊島竜王・羽生九段戦のように、AIの形勢判断と対局している棋士の判断とが乖離するケースも出てきている。

果たして棋士たちはどう考えているのだろうか。