■ AIが見つけた勝利への「細い道」

羽生九段の「勝率」を94%と示した「SHOGI AI」は同時に、数手先までの「最善手」も提示していた。
後の検討でも、その手順であれば先手が勝てそうだと確認された。

「ものすごく細い勝利への道を1本、見つけちゃったんですね、AIが。例えば5億手読んで1通りだけ勝利の道があるという時でも94%、出ちゃうんですよね…」(ABEMA藤崎氏)

コンピュータ将棋に詳しい西尾明七段は、AIが示した手順についてこう話す。

「確かにすごく細い道筋ではあるんですけど、その細い道を渡れば勝ちなんですよって見せられると、ああなるほど、と一応納得はできる形ではありますね」

そのうえで棋士の心理面から、こう推測する。

「唯一存在する勝ち筋が見えないと、棋士としてはどうしても負けに見えてしまい、投了してしまったということはあり得るかと思います。
『あ、これもう負けになったんじゃないか』とか、いったんそういった感情が芽生えてくると、そっちのほうに流れて行ってしまい、その先のところを読み切れなかったところがあるんじゃないでしょうか」

対局者の置かれた過酷な状況も影響したのではないかという。
既に対局開始から14時間以上が経ち、一手を1分以内に指さねばならない“1分将棋”となっていた。

「それはもう、すごく影響しています。朝から戦っていて、深夜ですので、かなり体力的にも疲労が来てる中で、振り絞って指してるところなので…」(西尾七段)

だがAIは疲れない。1分将棋であることも考慮しない。
自身が数秒で見つけた道筋をもとに、はじき出した「勝率」が94%という数字だった。