【タイトル:平和な大学生の日常】
彼の名前は和也。平凡な日々を送っていた。いつも通りに大学へ行き、夜には小さなアパートへ帰る。そんな彼の日常に、ある日突然、奇妙な出来事が起こった。
駅のベンチに座っていると、一人の奇妙な男が近寄ってきた。無表情で、ややくたびれたスーツを着ている。男は和也に笑顔を向け、「これ、食べてみませんか?」と言って、手のひらに何かを差し出した。
和也は困惑しながらも、男が手に持っているものを見た。それは一見チョコレートのようだったが、異様な臭いが漂っていた。「いや、結構です」と言おうとしたその瞬間、男は強引にそれを和也の口に押し込んできた。
「やめろ!」と叫んだが、男は笑顔のまま。抵抗する間もなく、和也はそれを口に入れてしまった。その瞬間、強烈な吐き気が襲い、何かが体内を支配していく感覚が広がった。
男は去っていったが、和也の頭には無数の質問が浮かんだ。何を食べさせられたのか?なぜあの男は笑っていたのか?
その晩、和也は激しい腹痛に襲われた。病院に駆け込むも、医者たちは原因を突き止められず、ただ痛み止めを渡してくれただけだった。しかし、それから数日後、和也の体には異変が起こり始めた。
肌は黒ずみ、口内は腐敗したような味が常に残り、体は異常なほどに衰弱していった。職場には行けなくなり、友人も、家族も彼を避け始めた。まるで彼が腐敗そのもののように。
やがて、彼はすべてを失った。仕事も、家も、健康も。そして、あの男の笑顔が毎夜夢に現れる。「どうだ、味は?」
和也は鏡を見つめた。そこに映る自分の顔は、もう人間ではなかった。膨らみ、腐り落ちる皮膚。口から溢れ出す何か。そして彼は気づいたのだ――自分があの日食べたものは、ただの食べ物ではなかった。それは、彼の魂そのものを腐らせる何かだったのだ。
最後の力を振り絞って、和也は駅のベンチへと戻った。そこに、またあの男が座っている。そして、同じように笑顔で、新たな犠牲者に「これ、食べてみませんか?」と言っているのを見た。
和也は叫ぼうとしたが、口から出たのはもう言葉ではなかった。腐り果てた自分の姿を見つめながら、彼はただ静かに崩れ落ちた。